<font color="F8F8FF">無事、これ名人。</font> | ◆クモノイト◆

<font color="F8F8FF">無事、これ名人。</font>

初めてバイクに乗ったのは中学生の時だった。

といっても盗んだ原チャリとかいうものではなく、ナンバー無しのモトクロッサーである。

競技用のモデルなので保安部品等が付いて無く、当然公道走行は不可なのだが、

公道で無い所、つまり河川敷やら有料のサーキットなら走る事が出来る。

当然年齢は関係無いので、小学生位のキッズが50ccや80ccのミニモトで走ってる姿を見かけたりもする。

ちなみにこのキッズ達は走ってる姿がラジコンみたいで面白い。


今まで一度もバイクなど乗った事の無い俺が、

こぶし大の石コロがゴロゴロ転がる洗濯板みたいな地形の河川敷で、クラッチ付きの100ccである。

古い4ストミニとはいえ、運転経験ゼロの中坊には少々手強い相手だった。

なんとかギアを繋げる様にはなったものの、なにせそこらじゅう石コロと穴ボコだらけの河川敷である。

エンストしてはコケ、石にぶつかりはコケ、砂にハンドルを取られてはコケ。

しまいにゃ大人達に抜かれ際に跳ね石飛ばされて(ペガサス流星拳みたいだった)

その跳ね石が顔面ヒットしてはコケで、体中アザだらけになったのだが、

俺は走るのを止めなかった。

いや、正確に言うと止めれなかったのだ。

自転車では到底出ない様なスピードが、右手をひねるだけでいとも簡単に出る。

自転車では漕ぐ事すらできない様な砂地を、ぐいぐいと進んで行く。


そして、そして何よりも自由を感じた。

あんなに自由だと感じた事は今までに無かったと思う。

バイクの力に頼ってはいるのだが、そんな事も忘れるくらい風と一体化していた。

シートから腰を浮かして立つと、空を飛んでる気分になれた。

チャリンコ小僧だった自分がひどくバカらしく思えてきた。


その開放感と、チャリしか知らない中坊には驚異的だった走破性に、我を忘れて夢中になった。

コースからどんどん外れ、河川敷の下流に向かってひたすら走っていた。

だが生い茂る木々や深い轍などに行く手を阻まれ、しょうがなく引き返そうとバイクを止め振り向くと・・・。

犬。

英語で言うとドッグね。dog。

ちょっと大きいかな~?

家族連れだな~。

計4匹?

ん~、なんかメッサ睨まれてるんスけど。

そんなに眉間にシワ寄せちゃってさぁ、歯が見えてるよ?

あれ~、コレって割とヤバめな状況かなー?って。

アホな中坊でも流石にわかりましたよそれくらい。

もうね、あの時のスタートダッシュは今の所バイク人生で一番華麗だね。

ホイールスピンしながらカウンター当ててダッシュ。

人間やればできるんだなぁ、って。

犬見た瞬間にアクセル全開でダッシュしましたよ。

こういうのがホントのダッシュだなって思った。

スタートしてすぐ後ろ振り向いた。

もしかして追って来てなかったりして、なーんて考えてもみましたよ。

でもね、人生そんな甘く無いんだよね。

4匹どころか何故か1匹増えて計5匹、しっかり追って来てましたよ。

もうバウンバウン吠えながらね。全速力で。

しかも速ぇーの。

肉食獣に追われる草食獣の気持ちが痛い程解りましたよ。

今の俺はただのエサなんだなって。

コケたらどうなんの俺?

5匹の野犬ですよ?

結構デカいですよ?

こんな河川敷の外れで犬達にあんな事やこんな事されちゃいますか俺?

そんな事マジに考えたら、もうなんかね、切れましたね、脳の配線が。何本か。

中坊には刺激が強過ぎたね。

なんか途中から半ベソかきながら笑っちゃったもん。

人間そうそうリアルに「死」を感じる事は少ないと思うのだが、

それが自分の望まない形でジワジワと押し寄せて来る感覚、

中坊の俺にはとても耐えられる代物ではありませんでした。

もう、ひたすら前を見てやれる限りの事をやって走るしかなかった。

どれぐらい走ったか、ふと我に返って後ろをもう一度見ると、

もう犬達は居なかった・・・。


周りに他の走ってる人達が見えてきた時、

安堵と同時に何か黒いものを自分の中に実感した・・・。

気が付くと体が震えていた。

多分それは恐怖の振るえと、喜びの震えだったと思う。

なんかいけない事を知ってしまった様な気がした。

危険な状況を楽しむ・・・。

これは人間ならではの事ではないだろうか?

自分からライオンに近づくシマウマは居ないだろうし、

ワニがウヨウヨ居る川で泳ぐサルも居ないだろう。

何故人間は、身を危険にさらしてまで快楽を?

しかも性質が悪いのが、どうやら危険が大きければ大きい程快感も増すらしいんだよねぇ。

まぁ当たり前なんだけども。

この恐怖と快感の関係性とかって、すごく調べがいがありそうですね。

とても深いですなぁ・・・。


そして人間、一度知った快楽はとことん突き詰めていきたくなるものです。

全ては必然というかなんというか。

すぐに小排気量車に飽き足らなくなり、公道にも足を伸ばすのです・・・。

ヘタクソなくせして西湘バイパスでふおわkm/h出ちゃう様なバイク乗っちゃったり、

世界ン百台限定のホモロゲバイク買っちゃったりするんですよ。

しかし結局は通勤用にと買ったイタリアンスクーターがしっくり合う模様。

多摩川大橋でGMCの化け物トラックと競ってふふわkm/h出すよりも、

女子を後ろに乗せて芦ノ湖スカイラインを60km/hで走る方が全然気持ちエエ事に気付いてからは、

もう誰が何乗って何してようが全然お構いなしなんですが、

道端に転がって死ぬ輩が多いのなんとかならないでしょうか。

最近やたらと事故を見るんです。

ほんと直後のばかり。

246は交通量の多い幹線道路ではあるけど、ただの直線。

無茶さえしなければそんな大きな事故など起きないと思うんだけど・・・。

こんな所で死ぬもんじゃないですよ。

いくら強気でもトラックには勝てませんて。

2日連続で死体(死にかけかも)見せるなよ・・・。

どっかのバイク雑誌のコラムにもあったけど、

「無事、これ名人」

ですよホント。

俺は小心だから無事なだけだけどねー。


バイク歴13年、事故は一度もありませぬ。

あ、自爆が一回・・・。


ルールは破れどマナーは守れ。

で大丈夫だと思う今日この頃。


う~んべスパGT250ホシィ・・・。